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バスケ版ホペイロ!?エキップメントマネージャーってどんな仕事してるの?

川崎ブレイブサンダースには、Bリーグで唯一の肩書きを持つスタッフがいます。伊敷仁美エキップメントマネージャー(EMG)です。

エキップメントマネージャーを日本語に訳すると「用具係」。プレーに関わる用具を管理・整備する役職です。プロ野球やJリーグ、NBAなどではポピュラーな存在で、サッカー界では「ホペイロ」と呼ばれることもあります。ですが、現在、Bリーグクラブでこの役職を専門とするスタッフは、伊敷EMGのみ(※)。まだまだ謎多きこの仕事の実態について、直撃しました!
※2019-20シーズン終了時点。川崎ブレイブサンダース調べ

プロフィール
伊敷仁美(いしき・ひとみ)
1996年生まれ、沖縄県出身。小学3年生からバスケを始め、2017年9月、山梨学院大学4年次在学中に川崎ブレイブサンダースに加入。故郷の沖縄をこよなく愛し、「はいさいFESTA(ラ チッタデッラで開催される沖縄フェスティバル)」にもしっかり参加。幼少期のヒーローは琉球ゴールデンキングスの並里成選手。愛称は「イッシー」。

プレーに関わる全てのものを準備

―まずは、EMGってどんな仕事なのか、ざっくり教えてください。
伊敷:プレーに関わる物の管理、準備を全般的に担当する仕事です。

―プレーに関わる物……具体的はどんなものになるんでしょうか?
伊敷:ええと……練習のときだったらタイマーやボール、その他こまごました練習の用具ですね。試合のときは多くて、ユニフォーム、タオル、ケア関連のグッズ、クーラーボックス5~6個、ミーティングで使うプロジェクター、作戦盤、ジャグ……(まだまだ続く)。

―ありがとうございます。めちゃくちゃ多いということがよくわかりました(笑)。
伊敷:本当に多いです(笑)。アウェーのときは、試合で使う備品や洗濯で使う備品、トレーナー関連のケア用の備品、ドリンク、シャンプー類など、トータルでキャリー2~30個分の荷物を、業者さんのトラックで宿泊先まで運んでいます。

―30個!? そんなに多いんですか!
伊敷:他のクラブさんを見てると、どこもだいたいキャリー10個くらいのようですが、うちはアクシデントに備えて予備も運ぶので、特に多いんですよ。
私が入る前は、うちもキャリー10個くらいで、それをマネージャーと若い選手が手分けして運んでたそうです。
トラックは使わず、バスや新幹線に持ち込んで移動していたんですよね。今は、ボディケア用品とかケア用品といった選手各自の持ち物も事前に集めてトラックで輸送できるので、選手はバッシュとバックパックだけで、身軽に移動しています。

エキップメントマネージャーの1日

―ここからは、伊敷EMGのお仕事内容をより理解するために、1日の流れをうかがえればと思います。まずは、練習日について教えてください。
伊敷:朝は、前日に洗濯したウエア類やタオルをたたみ、クラブハウスの各選手の部屋の前に置いてから体育館に向かい練習の準備をします。タイマーやケアグッズ、ボールなどを準備し、マネージャー、通訳とともに、体育館内のすべての物品の消毒もします。毎日、練習前にスタッフミーティングがあり、10時から練習です。練習中はフロアワイパー、リバウンダーなどのサポートをしています。

練習が終わるとクラブハウスで、まずは午前中に使用したウエア類を洗濯機に入れてから昼食をとります。昼食後は2時間くらい洗濯です。その後、足りない備品の発注、備品の整理・確認などの事務作業をして、ちょっとだけ休憩して、18:30頃になると選手が午後の練習から帰ってくるので、またウエアを洗濯します。

―1日のほとんどが洗濯で占められてるんですね。
伊敷:実はそうなんです(笑)。今はコロナウイルス対策のため、複数選手のウエアを一度に洗うことは避けているので、選手1人当たり1日2回洗濯をするのに5台の洗濯機をフル稼働させています。インナーや靴下など匂いが目立ちやすいものは、お湯に特別な洗剤を溶かしたもので浸け置き洗いして、選手が気持ちよく着用できるよう工夫しています。

―試合の日はどうでしょうか?
伊敷:アウェーの遠征は、試合前日に移動します。私は選手の2時間前にホテルに入り、キャリーバックを各部屋(トレーナールーム、各選手部屋、ミーティングルーム等)に置き、トレーナールーム、ミーティングルームの設営、ホテル側と必要なタオル枚数の打ち合わせを行っています。

試合当日は、2連戦の1試合目、19:05開始の試合だと11時にトレーナーとともにホテルを出て会場へ向かいます。到着後、ロッカールームを設営してチームの到着を待ち、13時から1時間、アリーナで練習。片付けをして一度ホテルへ戻って休憩し、16時にまたチームより一足早くトレーナーとともに出発します。ロッカーの整理、ベンチ周りの設営をして、17時半頃にチームが到着するので、その後はチームと一緒に動きます。試合中はベンチ後ろでトレーナーのサポートなどをしています。試合後、チームが会場を出てから片付けをしてコインランドリーへ移動し、ユニフォームをひたすら洗濯します。

選手の会場到着前に、ユニフォームをはじめ必要なものは全て準備する

―めちゃくちゃハードじゃないですか……
伊敷:そうですね(あっさり、にっこり)。
2日目は7時に起床してユニフォームや試合で使用するウエアを畳み、ホテル内のミーティングルームの設営やエキップメントルームの片づけなどをしてから、11時に1人で会場へ向かいます。14:05試合開始の場合、試合が終わって片付けをして運送会社さんのトラックに荷物を積み込んで、会場を出るのは18時頃です。アウェーの場合は、選手たちより遅い新幹線や飛行機で川崎へ戻ることが多いです。

試合中もウェアの管理やトレーナーのサポートを行う

―洗濯の時間がとても多いことが分かりましたが、練習着の洗濯は以前からしているんですか?
伊敷:練習着の洗濯は去年11月に、FC東京さんのホペイロ(用具係)さんを見学させてもらったのをきっかけに今シーズンから始めました。元々、練習着は選手個人で管理しているのですが、FC東京では、ホペイロが選手のシューズや練習着…ソックスやインナーまですべてを管理していて、すごく驚いて。「いきなり練習着を管理する」と言うと抵抗を示す選手もいると思ったので、まずは洗濯から徐々にやっていこうと決めました。

必要な用具がきれいに整理されているFC東京のクラブハウス

―なぜFC東京に見学に行かれたんですか?
伊敷:日本のバスケ界にEMGがいないこともあって、私は加入当時から、かなり手探りで仕事をしていました。「自分はBリーグ初のEMGだ!」と意気込むこともなく、「とりあえずやってみよう」くらいの感覚で…恥ずかしいですが(笑)。

ただ、チームの中で経験を積むうちに「優勝を目指すチームにふさわしい存在になりたい」「もっとこの仕事を突き詰めたい」という気持ちが高まって、いろんな方に相談して見学できるチームを探し、FC東京さんへの訪問が実現しました。

日本バスケ界での第一人者に

―ところで伊敷EMGは、なぜこの役職に就くことになったんですか?
伊敷:もともとはマネージャーとしての契約だと聞いていたんですが、加入が決まった際にエキップメント(用具)を担当してほしいと言われて。先ほどもお話しした通り、当時は正直どんな仕事かもよくわかってなくて「リーグ開幕時から応援していたブレイブサンダースに加われるんだったらなんでもいい」という感じでした(笑)。

―加入されたのは大学4年の9月。選手はこういうタイミングでの加入も増えてきましたが、スタッフとしては珍しいですよね。
伊敷:私は大学の体育会バスケ部に所属していて、試合には出ていなかったものの副キャプテンを務めていました。最後のリーグ戦とインカレが残っているタイミングでチームを離れることへの葛藤もありましたし、主力の座を奪えないままプレーヤーを引退することへの悔しさもありました。
ただ、Bリーグで働くのは以前からの夢でしたし、あこがれのチームで働けるチャンスはここしかない。そう思ってけじめをつけて、新しい場所でがんばろうと決めました。

大学時代、チームメイトと(前列右から2人目が伊敷EMG)

―日本バスケ界における第一人者。大変なこともたくさんあったと思います。
伊敷:そうですね……。加入して1週間後にアーリーカップがあって、そのときはかなりパニックでしたね(笑)。前年までマネージャーをしていた山科朋史さん(現:チームマネジメント部)に付きっ切りで教えてもらいながら、なんとか最低限のことはこなしていった感じです。忙しいし、荷物はめちゃくちゃ重いですし、水曜ゲームがあるときは体力的な疲労も相当あります。

―うれしかったことはありますか?
伊敷:選手が「荷物を新幹線で運ばなくなったり、試合の日にユニフォームを自分で洗濯する事がなくなってだいぶ楽になった」と言っているのを又聞きしたときは、すごくうれしかったですね。

―篠山選手やファジーカス選手が「伊敷EMGが来てくれて本当に助かっている」と話しているインタビュー記事もありましたね。
伊敷:ありがたいです。誰も直接言ってくれないんですけど(笑)。
私のモチベーションはすごくシンプルで、あこがれの選手たちと同じチームで同じ目標に向かっているということ。試合に勝ったときはもちろん、一緒に練習に取り組んでいる日々が、ただただ楽しいし充実している。だからこそ、もっとチームの役に立てるように頑張っていきたいです。

―EMGとしてどんな目標を掲げていますか?
伊敷:先ほども話したとおり、優勝を目指すチームにふさわしいEMGになることが一番の目標です。選手がプレーだけに集中できるようになるために、自分ができることは何か。他の競技の用具担当者の仕事ぶりを見てもっともっと研究していかないといけません。人のいいところを見て、研究して、自分に生かすことはプレーヤー時代から得意だったんです。

この仕事を突き詰め、日本バスケ界に広く知ってもらうことは、第一人者である私の役割でもあると考えています。ぶっちゃけてしまうと誰でもできるような仕事かもしれないけれど、だからこそ細かく、深いところを追求していくことを忘れずにいたいです。

「優勝を目指すチームにふさわしいEMGになりたい」という伊敷EMG

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