川崎駅近の大型本格バスケットボールコート『KAWASAKI BRAVE THUNDERS COURT』誕生秘話
1日に約16万人が利用する巨大ターミナル・JR川崎駅。この秋、ここから徒歩5分に位置する商業施設『ラ チッタデッラ』の施設内に、川崎ブレイブサンダースが運営するバスケットボールコート『KAWASAKI BRAVE THUNDERS COURT』(以下、サンダースコート)がオープンします。
フルサイズ のバスケットボールコート二面に、クラブハウスとシャワールーム完備という充実したバスケットボール施設が、ターミナル駅の徒歩圏内に誕生するのは、おそらく日本初のこと。川崎ブレイブサンダースはなぜこのようなコートを作ったのか。そして、このコートにどのような未来を描いているのか――。設立の立役者に聞きました。
プロフィール
内藤誠人(ないとう・まさと)
株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース
地域振興・アカデミー事業部 部長
1982年生まれ、埼玉県出身。DeNA、教育系ベンチャーを経て2020年に川崎ブレイブサンダースに入社。中高時代はバスケ部員で、高校時代の最高成績は県大会ベスト8(ベスト4がけはダブルオーバータイムの大熱戦!)。
試行錯誤と紆余曲折のコートづくり
――サンダースコートの構想はいつごろ生まれたんですか?
内藤:「クラブの自前のバスケットコートを作ろう」と考え始めたのは、2020年の末ごろだったと思います。
――なぜ?
内藤:前段階としてアカデミー事業の構造について説明させていただくと、この事業は大まかに分けて強化育成と競技普及という2本の柱がありまして、強化育成はセレクション合格者のみで構成される「川崎ブレイブサンダースユースチーム」、競技普及はレベルを問わず入会できる「バスケットボールスクール【THUNDERS KIDS】」です。ユースチームは人数を限定していますが、スクールは興味のある方へ広く提供していて、ありがたいことに会員数が右肩上がりで増えていることもあり、会場の確保にかなり苦戦していたんです。
――公共施設は、他の団体さんや利用者もたくさんいらっしゃいますからね。
内藤:そうなんです。どこも週1回、3時間程度の枠を確保するのが限界で、スクールのコマ数を増やしたくても増やしようがなくて。そういう状況を受けて「だったら自分たちが自由に使えるコートを作れないだろうか」というアイディアが生まれました。
――そこからどのような経緯で、ラ チッタデッラの敷地内にコート設立が決まったのでしょうか?
内藤:当時、チッタさんの敷地内には大きなフットサルコートがあって、数年後にその敷地が空くかもしれないと話を聞いていたんです。チッタさんとはスポンサー様としてもお付き合いいただいているので、雑談レベルで「次はバスケットボールコートはどうですか?」と持ちかけてみたのですが、我々が当初想定していたより実現させるためのハードルが高く 、別のアイディアを模索することになりました。
次に検討したのが、宇都宮ブレックスさんが所有するレンタルコート『BREXバスケットボールコート』のように、倉庫だった施設を改装してコートにするという案です。天井が高めで、真ん中にあまり柱がなくて、広い倉庫はないかとあちこち探し回り、ホームページ上で公募までしたのですが、なかなか条件に合致する物件が見つからず……。改めて、当初チッタさんとお話していた案を様々な角度から検討してみたところ、「これなら実現できそうだ」 となったので、具体的なプランを携えてチッタさんにご相談し、正式に申し込みをしました。
駅近の大きな土地ですし、他にも申し込みをされた企業さんはたくさんあったかと思います。しかし、チッタさんに我々の事業を評価していただき、契約が実現しました。
川崎のバスケットボールの未来を作るサンダースコート
――サンダースコートは完成後、どのように使われるのでしょうか?
内藤:1面は、スクールで優先的に使う予定です。平日は15時以降から21時ごろまで、土日は朝から21時ごろまでみっちり使用します。先ほどお話ししたとおり、公共施設はどこも週1回、最大3時間程度借りるのがやっとだったので、「同じ時間帯に別の習いごとが入っているから通えない」という方もたくさんいらっしゃったんですが、サンダースコートができたことで、このような課題はクリアされます。
――ターミナル駅である川崎駅から徒歩5分という立地ですし、区や市を越えて通いやすそうです。
内藤:そうですね。あとはチッタさんという商業施設の中にあるコートなので、お迎えまでの間に買い物をしておこうとか、終わったら近くで食事して帰ろう、みたいなことがしやすいと思います。
――親御さんの送迎や家事の負担を軽減し、地域振興にもつながりますね。ちなみに、1面と平日のお昼までの時間帯は、一般の方向けのレンタルコートになるのでしょうか。
内藤:はい。ただ現状、平日の午前中からバスケをやる人はそう多くないと思うので、テニスやヨガといった他のスポーツを楽しむ場所として使ってもらうことも想定していますし、川崎市やチッタさんと連携して、様々なイベントの実施スペースとしても利用してもらえたらいいなと思っています。
――サンダースコートの誕生は、クラブのアカデミー事業にどのような影響を与えると思いますか?
内藤:子どもたちがバスケットと触れ合う機会や、バスケットの技術を向上させられる機会がぐんと増えると思います。
これまで、場所と時間が確保できないことを理由に実施できなかったイベントがたくさんあるんです。例えばクラブが主催する子供向けの大会や、単発のスペシャルクリニックなど……。自前のコートができ、施設のスケジュールをある程度自分たちがコントロールできるようになったことで、今は「あれができるな」「これもできそう」と、アイディアがどんどん湧いているような状態です。
――川崎の中心から、どんどんバスケットの魅力を発信できそうですね。
内藤:先ほど「多目的に使える施設にしたい」と話しましたが、せっかくバスケットボールをメインとした素晴らしい施設ができたんですから、クラブの掲げるミッション『MAKE THE FUTURE OF BASKETBALL ~川崎からバスケの未来を~』を実現するための一役を担っていきたいです。例えば、午前中はシニア層、午後は子ども、夜は20代以降がバスケを楽しむ流れができたら、すごくいいなあと。今お話していることはあくまで私個人の理想なので、サンダースコートに関わる全員でしっかりと未来を描いていきたいです。
――最後に、読者の方に伝えたいことはありますか?
内藤:とどろきアリーナの近くに、大きな広場があるじゃないですか。試合の後、撤収作業をして帰るときに、そこでバスケットボールをついて練習している子をよく見かけるんですけど、その広場はリングがないので、みんな空に向かってシュートを打つんです。スラムダンクのフクちゃんみたいに。それを見るたびに、もっと気軽にバスケの練習ができる環境が作れたらいいなと思っていました。
今回、サンダースコートができたのはクラブにとって非常に大きな一歩だと感じていますが、「バスケをやってみたい」「バスケが好き」という子どもたちを増やせるよう、今後もバスケットゴールがある施設を1つでも2つでも増やせるようにがんばっていきたいです。